うつ病になった魚

教養新書
うつ病になった魚

目からウロコ!うつ病、絶望の淵からの生還

  • 著者:山内 麻莉
  • 新書:260ページ
  • ISBN-13:978-4903859040
  • 発売日:2007/11/10
  • 定価:1,050円

 

「この人は40歳になれば目からウロコが落ち、自分のあるべき姿が見えてくる」これは「鬱病」を抱えながら、モラトリアムを過ごす私を心配した母と姉が、7年も前に姓名学の大家に相談に行った時の言葉。時まさに39歳8ヶ月。いまだに鬱病を抱えている状態で初めてその言葉を聞いた私。ある朝目覚めると「魚」になっていた。愛 犬のチワワと魚体の一部であるエラに伴われ、半生を振り返り、これからを見つめる時を迎えたのである。

著者について

山内 麻莉(やまのうち まり)

39歳11ヶ月。標榜は麻酔科医。医学生時代にストーカー被害、鬱病を発症。当初の志である心療内科研修医となるも、その現実に涙。精神科にて入院治療。心機一転、外科研修医を経て麻酔科医となる。その忙しくも充実した日々を過ごしたが、出向先の病院での「封建組織」のストレスの嵐に翻弄され、またも鬱病に。8年近いモラトリアムの後、鬱のコアは抱えながら、自称「スーパー健康診断医」として目覚める。時同 じく国際結婚、周期的日米暮らし。しかし本年また大きな病状の悪化。鬱病を理解できない夫とのズレが埋めきれず帰国。やっとめぐり会えた「素晴らしい精神科医」の元で治療を受けつつ回復中。新しい世界を目指して泳ぎ始めたところです。

本の中身を少し紹介

1 はじまり

「ナミちゃん、占いのセンセイが40歳になったら目からウロコが落ちて、自分のあるべき姿が見えてくるんだって」
 ある日、姉のナチコが7年前に、母と2人で私のことを占ってもらいに行ったときの事を何気なく話した。
 私ナミコは、昨年国際結婚したが、現在、鬱病(うつびょう)の回復期。一応、医師免許を持っている半出戻り状態の39歳の女性なのだ。
ナチコは私の歳を忘れていたのにポロリと話が出たのだ。「40歳!もうすぐじゃないの、自分のあるべき姿?なんだか責任感を持つ感じで、怖いわぁ」というのが、第一印象。
 この鬱病という曲者は、回復期が非常に大事で、元気になってきたところで、さてまた元のデューティーワークに戻らねばとあせる。すると、せっかく登った坂を、ころころ転がり落ちて、前より深いネズミ返しがついた壷に落ち込んでしまうのである。十年前の経験で、実証済だ。
「仕事に戻らなきゃ」
とあせりにあせり、とうとう入院。頭の両方から、なんだか電気まで通電していただいたり、結局、薬をがぶ飲みしたりなまじ医療の知識があるので、睡眠剤は意味がないが、これなら逝ける薬を知っていたので、あのころのことを思い出すと、嫌な汗がオヤジ臭のように漂ってくる。そして結果、鬱病のコアがずっと残って、時々もぐらたたきゲームのように病状が頭を出し、早くにハンマーで退治できればよいが、今回のように、にっちもさっちも行かなくなり、急遽チケットを送ってもらい、飛行機で成田へご帰還となってしまったりする。
しかし、
「分かっちゃいるけどやめられない」
そこはやはり本人あせるのか
「実家でゴロゴロしているだけで、こんなんでいいんでしょうか」
と、毎週治療に通っている。これまでに初めて出会った
「この人すごい!」
の精神科のセンセイに確認し
「わがままだと思っても、今は自分のしたいことだけして、ゆるゆる暮らしてて下さい」
との免罪符を頂き、精神の水戸黄門の印籠状態としている今日この頃なのだ。
「控えおろう、この鬱病診断が目に入らぬか!ゆるゆる暮らしていいのである!」