イノベーションを加速するオープンソフトウェア

教養新書
イノベーションを加速するオープンソフトウェア

  • 著者:相原 憲一(著), 松田 順(著)
  • 新書:220ページ
  • ISBN-13:978-4903859194
  • 発売日:2008/12/24
  • 定価:1,050円

 
 
イノベーションというキーワードが日常茶飯事に使われる情報化社会の進展は、いまや情報技術そのものの存在よりもその健全な活用能力を主張できてこそ生み出される新たな価値の創出と持続とが評価される時代を象徴している。一方では情報メディアの喧伝からWeb2.0、SaaS、そしてクラウドコンピューティングなど実体のない概念用語が過去の技術的用語を衣替えして氾濫している。その間、オープンソースソフトウェアという用語が着実に市民権を得て用いられている。ここで、オープンとは元来作り方・使い方の考え方のことであくまでも戦略でありソフトウェア自身の問題ではない。イノベーションの創出・持続とオープン戦略の関係においてその典型例としてソフトウェアの世界を如何に絡ませるかが、技術的、経営的、かつ社会的注目に値しよう。二〇〇七年一一月一八日静岡大学浜松キャンパスで開催された経営情報学会全国大会の特別セッションのひとつでは共催団体としての電子情報通信学会情報システムソサエティソフトウェアインタプライズモデリング研究専門委員会の下で『事業展開のカギを握るオープンソース活用』の内容をテーマにした。自社の強みを活かして広くイノベーションを加速するオープン戦略の一つとしてオープンソフトウェア活用を多くの方々で論じた。その枠組みは以下のとおりであった。オーガナイザ:松田順 綜研テクニックス、坂田淳一 早稲田大学 座長:相原憲一 静岡大学大学院 話題1「オープンソース利用の課題」日熊政行 日本電気通信システム 話題2「エンタプライズでのマッシュアップ利用促進策」片岡信弘 東海大学 話題3「オープンソースの事業活用と評価」 鈴木勝博、坂田淳一 早稲田大学 話題4「地方の中小企業におけるオープンソースビジネスの現状」杉本等 パドラック、相原憲一 静岡大学大学院 同学会大会後に成果を書物にしようとの発表者の意見で、今回の出版まで約1年間調整を図ってきた。わずか1年の間でも時代の変化は激しく出版時に時代錯誤にならないことや、また多数の著者がおり各自の背景が異なることから出版物としての趣旨の合意や記述用語の整理などで、多くの時間を費やした。出版には著者たちの価値共有が一番大切であり、最終的にイノベーションを価値のキーワードとした。イノベーションの源泉そのものがオープンソフトウェアとは認識できなく、実現の加速の仕組みにこそオープンソフトウェアの存在する意義があると結論して本書のタイトルとした。学会当初用いたオープンソースソフトウェアという用語の解釈はオープンソースからなるソフト2 ウェアになるが、ソース自身より広くオープンソフトウェアと捕らえたほうが時代の要求を反映する。時代の要求とは持続可能なイノベーションであり、技術的なこと以上に組織経営的なことや社会生活的なことを目標に掲げることが著者の共有価値に結びつくことが整理でき、読者にも訴えるものがある。

著者について

相原 憲一(あいはら けんいち)

第1章 静岡大学大学院専任教授。NTT 研究所・事業本部ならびに米国現地法人などで情報ネットワークの研究開発・国際標準化を担当。その間コロンビア大学客員研究員、米国電気電子学会Fellow。著書に「情報技術を活かす組織能力(共編著)」「気づく能力(共著)」など。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士。

松田 順(まつだ じゅん)

第2章 綜研テクニックス(株)企画調査室室長、専修大学及び青山学院大学客員研究員。電子情報通信学会ソフトウエアインタプライズモデリング研究専門委員会委員長、千代田化工建設(株) 企画調整室長、綜研化学(株) 等にて経営・企画・情報担当。組織学会、日本ベンチャー学会、プロジェクトマネジメント学会会員、横浜市立大学経営学研究科博士課程修了、筑波大学政策科学研究科修了(経営学修士)

日熊 政行(ひぐま まさゆき)

第3章 1971年宇部国立工業高等専門学校電気工学科卒業。現在日本電気通信システム株式会社にて内部統制関連業務に従事。職歴 日本電気株式会社にてネットワーク管理システム開発。その後、基幹情報システムの統括責任者。米国サーベンス・オックスレイ法404 条対応IT 内部統制確立に従事。

坂田 淳一(さかた じゅんいち)

第4章 東京工業大学准教授。アンダーセンにおいて、技術評価,技術戦略分析、情報システム分析を担当。また、中小企業総合研究機構では,ものづくり中小企業の技術開発、技術伝承をテーマに調査研究を実施。その他、早稲田大学国際情報通信センター客員研究員、信州大学経営大学院客員講師。著書に「CIO学論(共編著)」「知財88の視点(共著)」など。早稲田大学国際情報通信研究科博士課程修了、博士(情報通信学)。

鈴木 勝博(すずき かつひろ)

第5章 1997年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了(理学博士)。現在、早稲田大学国際情報通信研究センター客員研究員、(株)ビズライト・テクノロジー執行役員、早稲田大学理工学術院基幹理工学部非常勤講師。情報システム構築における上流工程実務に携わりながら、数理物理学のバックグラウンドをもとに、社会・経済系データを用いた経営の観点からの定量分析研究を実施。

伊藤 賢(いとう けん)

第6章 1999年武蔵工業大学経営工学科卒業。静岡大学大学院博士前期課程システム工学専攻修了、修士(工学)。修了後はISMS導入のコンサルテーション業務に従事し、現在に至る。NPO 東海マネジメント研究会に参加、IT統制、地域の産業集積について研究活動を行っている。

杉本 等(すぎもと ひとし)

第7章 株式会社パドラック代表取締役社長。元日本大学工学部専任講師、元静岡大学工学部非常勤講師。東北大学大学院工学研究科博士課程修了、工学博士 片岡 信弘(かたおか のぶひろ) 第8 章東海大学専任教授。東北大学大学院情報科学研究科博士課程修了、博士(情報科学)、技術士(情報工学)

本の中身を少し見てみる