「気づく」能力

教養新書
指定副読本
「気づく」能力

時代の風を読み、ヒトを動かす

  • 著者:相原 憲一, 舘岡 康雄, 弘中 史子
  • 新書: 169ページ
  • ISBN-13:978-4903859002
  • 発売日: 2007/12/15
  • 定価:1,050円

 
最近になり、一般に「人間力」といわれ、さらには「感性」という多様な解釈を持つ「気づく」能力が注目されている。ディジタル情報偏重時代から脱却して、人間力を主導とした経営戦略の下での事業体制作りこそ、これからの時代を乗り切る大きなカギを握ることになる。第一章では、意思決定プロセスの前段で必要となる「気づく」能力が生み出す業務プロセス上の能力連鎖の必要性を提示して、さらには組織的にも階層間の壁を取り払う「気づく」能力が重要であることを示唆している。第二章では、業務プロセスの下流工程の結果を重視した時代から、順次上流工程までさかのぼってプロセス全体のイノベーションを重視するプロセスパラダイムを提唱して、「気づく」人財の養成が重要であることを示唆している。第三章では、中部地区の食品業界では知らない人はいない「恵那川上屋」と地元栗生産者との「気づく」関係に注目している。第四章では、遠州地区の優良企業「クリアテック」の個人能力育成のフラットでオン・デマンド的な「気づく」社内体制の仕組みづくりを取上げている。

著者について

相原 憲一(あいはら けんいち)

第1 章、第3 章 担当 静岡大学大学院専任教授。NTT 研究所・本社事業本部ならびに米国現地法人などで20 数年間、情報ネットワークの研究開発・国際標準化・国際戦略を担当。その間コロンビア大学客員研究員。 IEEE(米国電気電子学会)フェロー。また、筑波大学大学院および長岡技術科学大学非常勤講師。その後、名古屋商科大学教授、法政大学大学院兼任講師。現職では競争優位戦略論、地域産業論を研究。経営情報学会、日本感性工学会、国際P2M 学会など会員。近著に「ソーシングイノベーション(共著)」日科技連(2003)、「情報技術を活かす組織能力 (共編著) 」中央経済社(2004)、「にぎわい文化と地域ビジネス(編著)」春風社(2005)など。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士。

舘岡 康雄(たておか やすお)

第2 章 担当 日産自動車人事部門主査。日産自動車中央研究所、研究開発部門、生産技術部門、購買部門、品質保証部門を経て、現職ではNW(ニッサンウェイ)の確立と伝承を推進中。1996 年よりプロセスパラダイムを提唱し、2005 年支援研究会を設立。2002 年度経営情報学会論文賞受賞。静岡大学大学院工学研究科客員教授、早稲田大学経営品質研究所特別研究員、多摩大学非常勤講師。組織学会、経営情報学会、経営工学会など会員。主要研究分野はパラダイムシフト、支援、複雑系。著書に「利他性の経 済学-支援が必然となる時代へ」新曜社(2006)。東京大学工学部応用化学科卒業。博士(学術、東工大)。

弘中 史子(ひろなか ちかこ)

第4 章 担当 滋賀大学経済学部准教授。名古屋大学大学院経済学研究科博士後期課程にて単位取得後,日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。専門は中小企業論。主としてモノづくりを行う中小企業の競争力向上について研究。最近は,中小企業が育む地域能力に関心。組織学会、経営情報学会、日本中小企業学会など会員。主要著作に「中小企業の技術マネジメント」中央経済社(2007),「コンカレント・ラーニング・ダイナミクス-企業と経営の理論-(共著)」 白桃書房(2003)などがある。

本の中身を少し見てみる

第一章 業務プロセスと「気づく」能力

*社会構造の激変
社会構造の激変が一層加速している。たとえば企業経営に限ってみても、商品としてのモノ(目に見える物からサービスまで)の価値観は全くといってよいほど変化している。購買意識は、かつてのように経済的観点から安くまた容易に手に入ることならば良いということからとっくに離れて、独自の価値観の下での購買意欲へと人間社会的観点から変化している。単に効率的生産性を追及して市場シェアを拡大することが目的であった企業経営の時代は終焉を迎えた。すなわち、企業経営は顧客嗜好の多様化で大量少品種生産ではない少量多品種生産を目指すことになり、また大都会追従だけではなく地域社会独自の受け止め方も充分考えたうえで大きく変化して価値観は多様化している。
このような時代背景の中で、営利追求の企業などを含む広い意味での経営組織体が他の組織体と較べて何らか意味において社会的に優れているとの評価を得て経済的に健全でかた模倣も困難な競争優位を継続していくことは至難の業とも言える。顧客嗜好が変化すれば経済的な生産効率を狙う生産システムに意味もなくなる。他方では、環境負荷軽減の生産・販売のあり方が新たに社会的コンセンサスを得ている点から経営戦略そのものの変化が確認できる。従来から、効率化による物質的、金銭的な評価を一般社会が受け止めてきたが、それは資産を生み出すまでの投資結果を良しとする考え方の結果であって、消費者が使用したその後の商品回収の将来への投資を如何に考えるかには必ずしも活かすことが出来ない。このような状況で、新たにケイパビリティ(活用能力)の概念が実務の観点でも積極的に導入されて競争優位の持続性に関する「能力」という観点からの議論が活発化している。
 この「ケイパビリティ」に注目して、特に「気づく」という能力に関してのダイナミック社会での営利企業におけるその適用可能性とその意義とに注目してみたい。最初に、ダイナミック社会の競争優位の持続に対する問題意識をまとめる必要がある。加えて、「気づく」能力に関して事業プロセスの各々の観点からの思考が必要になる。そして、ケイパビリティに関する事業プロセスでの気づき連鎖の必要性を新たに意識して、「気づく」能力と「気づかせる」能力の連携の無さがギャップを生じることを意識しなければならない。さらに、組織構造、オンリーワン戦略、などの視点で「気づく」能力を捉えることがダイナミック社会と価値の変化を経営戦略の視点で理解することに繋がる。

*ダイナミック社会と価値の変化
自らうち立てた経営理念の下で事業目的の達成を使命とする経営組織体は社会のダイナミックな変化の

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