マルチPERT

理工学新書
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ここまで進化した資源制約型計画管理

  • 著者:杉原 弘章
  • 新書:175ページ
  • ISBN-13:978-4903859118
  • 発売日: 2008/3/31
  • 定価:1,050円

企業活動の統合化が進む中、生産活動のより高度な計画管理が強く求められるようになってきた。これに応えるため、新たに複数のプロジェクトを対象とした資源制約型計画管理手法「マルチPERT」を開発した。 ここでは独自の「ジョブ空間」により、ジョブの全貌や、クリティカルパスの全貌を可視的に把握できるうえ、クリティカルパスのふるまいをいろいろな角度から見ながら、効率よく負荷対策を検討できるようになった。 本書のもうひとつの特徴は分野にとらわれず、「管理」というものをいろんな角度で幅広くとらえている点である。その多様性は、実に興味深い。

著者について

杉原 弘章(すぎはら ひろあき)

静岡大学客員教授。博士(工学) 1942年奈良県生まれ。1965年大阪大学基礎工学部電気工学科卒業、 1967年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻(修士課程)修了。同年三菱電機(株)入社。鉄鋼プラント(主として厚板圧延プラント)の自動制御システムのシステム開発をはじめ、飲料、食品製造、半導体製造、自動車組立、自動車部品製造、電力系統監視、ビル管理、ガス、物流、自動倉庫、金型製造などの、制御システム、管理システムのシステム開発に従事。2003年(財)工業所有権協力センター。退団後2006年静岡大学客員教授(静岡大学大学院工学研究科事業開発マネジメント専攻)。2006年(株)ITSC代表取締役社長(現在、アドバイザ)

本の中身を少し紹介

第1章

資源制約型計画管理資源制約のもとで、並行して処理される複数のプロジェクト全体を一体化して計画管理するため、このたび新たな手法を確立した。この手法は単一のプロジェクトを計画管理する従来のPERT(Program Evaluation and Review Techniqueの略)、基本PERTを発展させたもので、「マルチPERT」と称する。なお、資源制約とはここでは「資源、すなわち機械、設備、ひと、時間などのリソースを共用することにより生じる制約」のことをいう。資源制約のもとでの日程計画については、近年、理論的な研究がさかんになり、数々報告されるようになったが、製造現場などでの実用にはまだ距離が感じられる。
また、「マルチPERT」という言葉はすでに一部で使われてはいるが、その定義などをきちんと詳細に示した例は見あたらない。ここでは資源制約のもとでの計画管理をめざして、「マルチPERT」に関する概念を示すとともに、各パラメータ類の詳細な算出方法や、従来のPERT図に対応する「マルチPERT」の「ジョブの立体モデル」を明らかにする。さらには、「マルチPERT」におけるクリティカルパスについて新たに判明した事実を示すとともに、最終的には「マルチPERT」におけるクリティカルパス解析により効率のよい負荷対策の検討・立案をめざす。
「PERT」はよく知られているように、単一プロジェクトの計画管理手法である。これに対し、「マルチPERT」はリソースを共用しながら並行して処理される複数のプロジェクト全体を一体化して、計画管理する計画管理手法である。これらが対象とする「プロジェクト」は、ここでは、ひとつの目的をもったひとつの事業あるいは仕事のこと。
その目的にそって、一連の要素作業から構成される。
とする。また、計画管理は、ここでは、
計画を立案し、立案した結果に基づいて事態が進むように状況を把握し、誘導すること。
とする。以下では場合によって、単に管理と述べることもある。
PERTのように強力な計画管理手法をもっと他の分野、たとえばジョブショップ生産の製造現場などで使えないかという声はかなり以前からあり、いろいろな試みがなされてきた。ところが、机上で細々とではあるがいろいろ研究されたものの、本格的な実用には至らなかった。むしろ、製造業には本質的にPERTを活用できない宿命的な問題があるかのようにさえ考えられた。

ところで、1980年代半ばは日本のものづくりは実に活発な時期であった。ものづくりの中心は金型であるといっても過言ではないが、全国の金型企業や金型を作る加工機のメーカなどはおおいにわいていた。

正誤表

第2章 従来のPERT

P28 3行目の式
(誤)= NF ij – EF ij
(正)= LF ij – EF ij