本書は、マルクス経済学の従来からの諸疑問点に対する一つの解答書である。諸疑問点とは、地代の価値源泉やその価値実現過程、価値実体の基本的なとらえ方、「総剰余価値=総利潤」は成立するが「総価値=総生産価格」は成立しない(地代は捨象)とする総計2不一致説などである。
本書は、それらの疑問に対する解答だけではなく、解答としての労働価値論(総労働時間=総価値=総価格、いわゆる総計2一致説)に立脚して、農業技術進歩による農産物の生産費の低下傾向(稲作を事例として)や一般的な技術進歩による生産部門の剰余価値率の内在的増加傾向を、日本の統計データからはじめて実証的に分析し、明らかにしたものでもある。
いわば、理論的、実証的な書である。
小栗 克之(きおぐり かつゆき)